映画で猫をどう演技させる?『猫なんかよんでもこない。』監督インタビュー

インタビュー

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(C)2015杉作・実業之日本社/「猫なんかよんでもこない。」製作委員会

文=熊坂多恵

雑誌の特集や写真集、CMに映画にバラエティまで、ここ数年、日本は空前の猫ブーム。猫は家族の一員としても人気急上昇中で、これまで犬がリードしていたペットとしての割合も、そろそろ猫に逆転されそうとのこと(一般社団法人ペッドフード協会調べ)。

とはいえ、かわいいけれど自由奔放な猫と暮らすのはなかなかたいへん。そんな悲喜こもごもを描き、30万人が泣いたコミックス「猫なんかよんでもこない。」が、にゃんともステキな映画になりました。プロボクサーを目指すミツオと、彼のもとに転がり込んできた2匹の子猫の出会いと成長を描く感動の実話。映画では、黒猫のクロと、はちわれのチンが、風間俊介さん演じるミツオのあとをニャンニャンとついてきたり、布団の中までニャニャーっと入ってきたり、かと思えば、言うことを全然きかない、よんでもこない(タイトル通り!)、猫と人の愛おしさと緊張感に満ちた関係に、笑わされ、泣かされます。

しかし気になるのは、この猫ちゃんたちの自然な演技。どうやって演出しているの? 

この映画を監督した山本透さんと、クロ役のりんご、チン役ののりこが所属する動物プロダクション、グローバル・アニマルアクトの江上緑さんにきいてみました。

(C)2015杉作・実業之日本社/「猫なんかよんでもこない。」製作委員会

―まずはキャスティングから。

山本監督:「とにかく黒猫にはたくさん会いましたね。りんごちゃんに決めたのは、猫嫌いというか、猫みしりする珍しい猫だから。猫のケンカのシーンを撮りたかったのでちょうどよかった。あとは“待て”とかもできるので」

なるほど、役にあった個性と芸達者なのが決め手ですね。ではのりこは?

山本監督:「のりこちゃんは鼻がピンクですっごくかわいかった。“ザッツ・はちわれ”って顔してるでしょう?」

監督、いきなり理由がメロメロです(笑)。

―りんごはCM、のりこはドラマ「深夜食堂」などに出演するタレント猫。普段はどんなトレーニングを受けているのでしょうか?

江上:「猫は犬とちがって毎日訓練をするような動物ではないので、エサを使ってよんだり、おもちゃを使ってよんだりはしますが、具体的な訓練はそんなにないんです。それぞれの猫の性格をみて、それに合った方法で訓練をします。あまりしつこくしつけても猫は嫌がるので」

これには監督も同意。

山本監督:「そうなんですよ。嫌だと思うと絶対にやらない。たとえばクロがテレビの上に乗る、というシーンも、最初は怖がってなかなかできなかった。でも現場に入ってくれた佐々木トレーナーはとても上手で、最初に階段をつけて登らせて、登るようになったら段をひとつずつ抜いていって、最後には階段がなくても乗るようになった。そうやってさりげなく訓練して、猫ができるようにしていくんですね」

(C)2015杉作・実業之日本社/「猫なんかよんでもこない。」製作委員会

―やはりプロの技。ちなみに「うちの猫もスターに!」なんてことは可能なんでしょうか?

江上:「ある程度はできると思うんですが、一番必要なのは、どこに行っても落ち着いていられるかということ。訓練や慣れもありますが、もともと持っている性質が大きいと思います。それができないと演技もできないので。いまここでもこの子たちはこんなふうにしていますし」

と部屋の隅にあるケージを振り返る江上さん。えっ!? ケージの中に何かいるんですか!? のぞいてみると、それはそれは静かに、のりことりんごが鎮座していました。まさかいらっしゃったとは……。のりこはこの後、ケージの中でフガフガいびきをかきながら寝るという大物っぷりを披露してくれました(笑)。

こんな個性と愛嬌(&度胸)あふれるプロの2匹、そして子猫時代を演じる素人猫ちゃん2匹との撮影は、とにかくたいへんだったそう。

山本監督:「子猫はフレームの中に5秒もいてくれない。初日に子猫の撮影からスタートしたら、あまりにも自分の思った画が撮れなくて、家に帰って、“どうしたらいいと思う?”って自分のうちの猫に相談してました」

監督の家の猫はしんみり聞いてくれたそうです(笑)。とはいえ、撮影が進むにつれ、猫もスタッフもお互いに慣れて、だんだんスムーズに行くように。

山本監督:「基本的には猫合わせに切り替えて、猫があっち行ったらあっちで撮る、風間くんにもカットかかるまでずっと演技していてほしい、猫がどこに行こうが続けてほしい、とお願いしました。最終日は、どうしても撮りたかった風間くんと猫が一緒にお昼寝するシーンの撮影のだったのですが、風間くんの演技が通じたのか、信頼関係ができたのか、すんなり撮れたんですよ。あきらめなくてよかった、猫もリラックスしてくれてよかった、としみじみ思えたカットでした」

(C)2015杉作・実業之日本社/「猫なんかよんでもこない。」製作委員会

また本作は、りんごとのりこに加え、「あまちゃん」「ヨルタモリ」のドロップなど、スター猫が続々出演するオールスターキャットならぬキャスト。いろいろな猫が見られます。

―ところで、猫のトレンドってあるんでしょうか?

江上:「いまは、丸顔で耳がちょっとたれているスコティッシュフォールドが一番人気だと思います。うちにも一番多く所属しています。」

 耳の折れたスコティッシュ、かわいいですよね!

―では最後に、最も気になる質問を。猫なんかよんでもこない私、ですが、どうしたら猫に好かれますか?

江上:「猫は犬と違うので、よんでもこないのがふつう。好かれようとすることを、猫は嫌がるのかもしれません」

山本監督:「放っておくと寄ってきたりします。そういう生き物だと思いますよ」

そうか、よんじゃいけないのか……。猫に好かれる道は遠そうなので、まずは映画「猫なんかよんでもこない。」で、スター猫たちをたっぷり愛でようと思います。

『猫なんかよんでもこない。』インタビュー山本透監督(右)とのりこちゃん、江上緑さん(左)とりんごちゃん

『猫なんかよんでもこない。』
2016年 1/30(土)より全国公開
原作:杉作 「猫なんかよんでもこない。」(実業之日本社刊)
監督:山本透
脚本:山本透 林民夫
(C)2015杉作・実業之日本社/「猫なんかよんでもこない。」製作委員会

 

この記事で紹介している作品

『猫なんかよんでもこない。』

 

記事制作 : Avanti Press(外部サイト)