文=鈴木元

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『女が眠る時』
(C)2016 映画「女が眠る時」製作委員会

ビートたけし主演の映画『女が眠る時』が、2月27日に公開される。自身の監督作以外での映画主演は、『血と骨』以来実に12年ぶり。米・ロサンゼルスを拠点とする香港出身の映像作家ウェイン・ワン監督とのタッグも話題となっている。

北野監督作でスターとなった西島秀俊
ビートたけしとの共演にどう取り組んだか?

役どころは、孫ほども年齢の違う美樹(忽那汐里)とリゾートホテルに逗留している初老の男・佐原。美樹の寝姿を少女の頃から撮影し続けているような得体の知れない男で、何とも言えない不気味な雰囲気を醸し出す。異常性愛のようにも映る光景に心を奪われていくのが、西島秀俊演じる作家の健二。たけしと西島も、注目すべき組み合わせだ。

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『女が眠る時』
(C)2016 映画「女が眠る時」製作委員会

ご存じのように西島は、2002年の北野武監督作『Dolls(ドールズ)』の主演に抜てきされたのを機にスターへの道を歩み出した。いわば、たけしは恩師。俳優同士としては、昨年の『劇場版MOZU』に続く共演となる。

西島はもともと、ワン監督の『女が眠る時』の構想を聞いた段階から出演を直訴。後に脚本に興味を持ったたけしが出演を承諾することになるが、「最初に読んだ時は西島くんが主役だったのに、完成台本では俺になっている。どうなってんだ、これって思ったよ」と冗談交じりにこぼす。一方の西島は、「僕の役はどんどん追い詰められるけれど、最終的には佐原によって再生するわけだから、それを北野さんが演じるというのはしっくりきた。どこか哲学的な空気を持っていて、他の方にはできない」と明かす。

役者から「こうやったら」って言われると
腹が立ってしようがない

撮影でも、ワン監督は出演者の意見を取り入れ、雑談の中での言葉もヒントにしてセリフを変えたり、当日になって新たなシーンを加えることもあったという。もちろん、たけしも求められれば具申したそうだが、「自分が監督の時に役者の方から『ここのシーンはこうやったら』って言われると腹が立ってしようがない。2度とこいつは使わないと思うもん」という理由で、監督の思考は封印し役者に徹したと強調する。

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『女が眠る時』
(C)2016 映画「女が眠る時」製作委員会

『MOZU』では公安警察官と日本犯罪史の闇を牛耳るダルマとしてクライマックスで対決したが、今回は完全な心理戦。静ひつな映像の中でジワジワと追い込み、追い詰められていく対峙に引き込まれていく。西島も「北野さんの弛緩したところと殺気が同居しているのは何なんですかね。本当に不思議。でも、目の前でそれが見られたので、自分も獲得していきたいと思っています」と心酔の度合いを高めた様子だ。

そう、西島は常にたけしを「北野さん」と呼ぶ。師匠に対する尊敬の表れなのは間違いないが、実にほほ笑ましい。対するたけしも、「素材としては年期も踏んでいるし間違いない役者さん。何でもこなすと思うけれど、誰がどう使うかが問題」と絶大な賛辞を送る。

そして、「台本を作ってみて、この役を誰にやらせたらいいかな、あれっ、西島くんだと思ったらすぐに頼みに行くよ」と示唆すると、西島の表情が緩んだ。さらに強固になったこの素敵な師弟関係が、北野映画で再び実現することを願ってやまない。