文=ロサンゼルス在住ライター 町田雪

米国はアワード・シーズン真っ盛り!今月末に控えた映画の祭典アカデミー賞をゴール地点として、各映画賞の発表や受賞獲得のためのキャンペーンでハリウッドが騒がしくなる季節なのだ。さて、「アカデミー賞」と聞けば誰もがピンと来るだろうが、年間を通してアメリカから届く「○○賞」のニュースに、「一体、何の賞?」と混乱する方も多いのでは? というわけで、今回は米ショービズ界が発表する有名なアワードについて、簡単に解説したい。
*下記は時系列で紹介。発表時期、授賞式会場は、その年によって異なる場合があります。

アニー賞 

インサイド・ヘッド
2016年のアニー賞作品賞(映画部門)受賞作『インサイド・ヘッド』
©Disney

対象:アニメーション
主催:国際アニメーション協会
発表時期:1月
授賞式会場:ロイスホール/ロサンゼルス
映画部門とテレビ部門の2つの部門にてアニメーション作品を讃えるアワード。ディズニー、ピクサー、ドリームワークスなどの米スタジオ作品が常連だが、もちろん、日本が誇るアニメーション作品も大活躍。2003年には『千と千尋の神隠し』が受賞に輝き、その後、『千年女優』『ハウルの動く城』『風立ちぬ』『かぐや姫の物語』などもノミネートを果たしている。今年の受賞作は『インサイド・アウト』。文句なしの受賞で、アカデミー賞の長編アニメーション作品賞獲得へと王手をかけている。

ゴールデングローブ賞

ジェニファー・ローレンス
コメディ/ミュージカル部門・女優賞を受賞したジェニファー・ローレンス
©HFPA/AdMedia/Newscom/Zeta Image

対象:映画・テレビ
主催:ハリウッド外国人記者協会
発表時期:1月
授賞式会場:ビバリー・ヒルトン・ホテル/ビバリーヒルズ、ロサンゼルス
映画・テレビ界の俳優やクリエイターたちが一堂に会すること、投票権を持つ外国人記者たちが人気スターをノミネートすることが多い(と言われている)ことから、とても華やかなアワード。出席者が空腹をこらえながら、上品に席に座っているアカデミー賞とは対照的に、ゴールデングローブは、ゲストが料理を楽しむ間に式が進行するため、豪華なディナーパーティのような雰囲気だ。ワイングラスを片手に登壇するプレゼンターや、酔っぱらってろれつが回らない受賞者の姿も風物詩。スターのレッドカーペット・ファッションも、“ゴールデングローブで遊び、オスカーで決める”といった傾向にあり、その違いを見るのも楽しい。2012年にはYOSHIKIが公式テーマソング「ゴールデングローブのテーマ」を作曲!

グラミー賞

対象:音楽
主催:全米レコード芸術科学アカデミー(NARAS)
発表時期:2月
授賞式会場:ステイプルズ・センター/ロサンゼルス
米音楽界の最高峰であるアワード。一流アーティストによるパフォーマンスや、世代やジャンルを超えた意外なコラボレーションなど、グラミー賞授賞式でしか見られないサプライズ企画は必見。今年の授賞式では、イーグルスによる、先月亡くなったグレン・フライへの追悼パフォーマンス、レディー・ガガによる故デイヴィッド・ボウイへのトリビュート、人気シンガーたちによるライオネル・リッチーの名曲メドレー、ジャスティン・ビーバーの復活パフォーマンスなどが目玉となった。テレビ中継されるのは夕方に発表される主要部門のみだが、グラミー自体は全80部門以上あり(過去には100部門以上あったことも!)、アルバム・ノーツ、パッケージ・デザインなど、音楽に携わるすべてのアートを祝するもの。日本人では過去に、坂本隆一、喜多郎、B’zのギタリスト松本孝弘らが受賞。今年は、クラシック部門で小澤征爾が初受賞する嬉しい結果となった。

ラジー賞

THE GOLDEN RASPBERRY
最低映画を選ぶラジー賞は、ウェブサイトもインパクトあり
©1980-2016, THE GOLDEN RASPBERRY (RAZZIE(R)) AWARDS, LLC

対象:(最低)映画
主催:ゴールデンラズベリー賞財団
発表時期:2月
授賞式会場:パレス・シアター/ロサンゼルス
アカデミー賞授賞式の前日に発表される、最低映画&最低パフォーマンスに贈られる賞。きわめて不名誉な賞のように聞こえるが、期待度が高かったためにファンを落胆させてしまった作品、アカデミー賞にはまったくそぐわないものの、カルト的人気を集めた作品、熱すぎて冷やかさずにはいられない演技など、何かしらの話題になった作品や俳優が選ばれるので、ある種、名誉ともいえる。とはいえ、“最低賞”と冠がつくのだから、授賞式に登場する受賞者はあまりいない。そんななか、2010年には『ウルトラ I LOVE YOU!』で最低主演女優賞と最低スクリーンカップル(ブラッドリー・クーパーとの共同受賞)を受賞したサンドラ・ブロックが授賞式に登壇。会場の観客全員に同作のDVDを配り、“再考”を促すという粋な計らいを見せた。ブロックはその翌日のアカデミー賞で、見事、主演女優賞(『しあわせの隠れ場所』)を受賞! 最低&最高の名誉を同時に手に入れることとなった。ちなみにラジー賞の授賞式は、約20ドルのチケットを買えば、誰でも出席可能。大勢の映画ファンと音楽パフォーマンスやパロディ・コントで盛り上がりながら、突然ブロックのような大スターに会えることもある。機会があれば出席してみたいアワードだ。

アカデミー賞

オスカー像
アカデミー賞の行方を待つオスカー像
Photo by Jordan Murph /©A.M.P.A.S.

対象:(最高)映画
主催:米映画芸術科学アカデミー
発表時期:2月
授賞式会場:ドルビーシアター/ハリウッド、ロサンゼルス
言わずと知れた、映画界の最高峰アワード。受賞者に贈られるあの有名なトロフィーは“オスカー像”と呼ばれる。授賞式の模様は世界225カ国・地域以上で放送。「オスカー・ノミネート」「オスカー受賞」と謳えることは、映画作品にとって永遠の称号となる。人知れず劇場公開されていた映画がロングランになったり、DVDのセールスを伸ばしたり、海外での配給が決まったりと、その影響力は計り知れない。近年の日本関連作品では、2003年に『千と千尋の神隠し』が長編アニメーション映画賞、09年に『おくりびと』が外国語作品賞を受賞。渡辺謙(『ラスト・サムライ』)、菊地凛子(『バベル』)の俳優部門ノミネートも記憶に新しい。ジブリ作品が大活躍の長編アニメ部門には、一昨年の『風立ちぬ』、昨年の『かぐや姫の物語』に続き、今年は『思い出のマーニー』がノミネート。アニメ大国・日本、ここにあり! の存在感なのだ。

トニー賞

渡辺謙
2015年のトニー賞に出席した渡辺謙と南果歩
©Demis Maryannakis/starmaxinc.com/Newscom/Zeta Image

対象:ミュージカル・演劇
主催:アメリカン・シアター・ウィング&全米劇場プロデューサー連盟
発表時期:6月
受賞式会場:ラジオシティ・ミュージックホール/ニューヨーク
ニューヨークのブロードウェイ劇場で、一定期間、公演されたミュージカルや演劇が対象となる、米演劇界で最も権威のある賞。米ショービズ界の4大アワード“EGOT”(テレビのエミー賞、音楽のグラミー賞、映画のオスカー、演劇のトニー賞の頭文字を合わせたもの)のひとつ。歴代のミュージカル作品賞受賞作には、「キャッツ」「ライオン・キング」「ヘアスプレー」「ジャージー・ボーイズ」など、日本でもおなじみのタイトルが並ぶ。昨年は、「王様と私」で主演を務めた渡辺謙がミュージカル主演男優賞にノミネート。自身の受賞は逃したものの、同劇はミュージカル・リバイバル作品賞、ミュージカル主演女優賞、ミュージカル助演女優賞、ミュージカル衣装デザイン賞の4部門を受賞する快挙を達成した。

エミー賞

対象:テレビ
主催:米国テレビ芸術科学アカデミー
発表時期: 9月
授賞式会場:マイクロソフト・シアター/ロサンゼルス
テレビ・シリーズやテレビに関する技術などを讃えるアワード。昼間の番組が対象のデイタイム、夕方から夜間の番組が対象のプライムタイムなど、いくつかのジャンルに分かれているが、最も有名なのはプライムタイム・エミー賞。最近の米テレビ界は、映画界で活躍した才能がテレビに流れ、従来のネットワーク局が有料ケーブル局に猛追され、そのケーブル局が今度はオンライン配信サービスに押されるという……激動の時期を迎えている。エミー賞においても、NetflixやAmazonなど、オンライン配信プラットフォームのオリジナル・シリーズがノミネートや受賞を重ねている。近年の受賞作は「24 -TWENTY FOUR-」「マッドメン」「ザ・ソプラノズ 哀愁のマフィア」「ブレイキング・バッド」など、日本でもおなじみの作品が多い。米ドラマ好きなら、必見のアワードである。

上記はあくまでも主なものであり、このほか、各ジャンルにおいて、俳優、監督、プロデューサー、脚本家、ヘアメイク、視覚効果、技術など様々なアーティストに贈られるアワードが存在する。米ショービズ界の層の厚さを感じる所以だ。これら主要アワードを参考に、お気に入りの極上エンタテインメントを探してみては?