伝説の武道館公演から今年で半世紀。その魅力が分かる“観るビートルズ”。

コラム

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伝説の武道館公演から今年で半世紀。その魅力が分かる“観るビートルズ”。

今から50年前の6月29日。わが国の音楽史を語る上で欠かせない出来事、いや、事件が起こります。そう。ビートルズが2日後の武道館公演を控え、日本にやってきたのです。
発表するCDはことごとく全米全英チャート1位、出演したアメリカのテレビ番組『エド・サリバン・ショー』は全米国民の60%に当たる7300万人が視聴、主演映画は全て大ヒット…。インターネットはおろか衛星放送すらない、今とは比べ物にならないほど、世界との距離感があった時代。遥か海の向こうで巻き起こっている神話が、突如、リアルな体験として日本全国に共有されたのです。当時の興奮はどれほどのものだったのでしょうか。想像もできません。

この1966年の衝撃、ひいては60年代に世界を掌握した「ビートルズ現象」がどれほどのものだったのか。体験していなくても、YOUTUBEにUPされているコンサートの動画などを観れば、推し量れるというもの。登場しただけで、何人もの若い女性を失神させられるミュージシャンが、今の世の中でいるでしょうか? また、レコード⇒CD⇒デジタル音源と、再生成され続けている楽曲を聴いても、その魅力は十分堪能できるでしょう。

しかし、ここでおススメしたいのは、ビートルズに(またはその楽曲に)インスパイアされた映画です。名曲を随所に散りばめたものから、ビートルズ史を振り返れるものまで、表現の形態は作品ごとでさまざま。ここでは、そんなビートルズを「観て」楽しめる洋画を3本紹介いたします。

■『アイ・アム・サム』-2001年公開

「ビートルズ?イエスタデイとレットイットビーの?」くらいの認識の人には、まずこれから観ることをおススメします。本作は、知的障がいをもつショーン・ペン演じる父と、ダコタ・ファニング演じる娘「ルーシー」の心温まるヒューマンドラマです。
この映画の中で使われている楽曲は、すべてビートルズのカヴァーソング。なんでも、この映画をつくるにあたり、監督が障がい者施設へ取材にいったところ、入居者たちの多くが、ビートルズソングを聞いていたのだとか。ビートルズの楽曲はシンプルな音の構成のものが多く、聞きやすいのが理由だそうです。その事実にインスパイアされ、劇中でオリジナル音源の使用を考えたそうですが、ビートルズの著作権料は途方もない額だったらしく、予定された曲すべてのフィーを支払うと、映画の制作費を軽々と超えてしまうことが分かります。そこで取られた措置が、カヴァーソングのレコーディングというわけです。
それが逆に、功を奏します。誰もが知る名曲から知る人ぞ知る佳曲まで。豪華アーティストによって歌いあげられた至極の楽曲たちは、煌めくような魅力を放ち、物語を情緒豊かに盛り上げます。結果、映画は大ヒット。劇中歌を収録したアルバムも、ロングセラーを記録します。
どの曲もすばらしいのですが、あえて、白眉を一曲挙げるならば、エイミー・マンとマイケル・ペンが歌った「Two of Us」です。まるでこの曲をモチーフに本作がつくられたのではないかと思うほど、歌詞が映画の世界観とマッチしています。エンディングで流れるアコースティックギターの心地よい音色と、歌い手2人の語り掛けるような優しい歌声…観終わったときには、温かな涙が零れていることでしょう。

■『バック・ビート』-1994年公開

「スチュアート・サトクリフ」という人物をご存知でしょうか? あまり知られていませんが、ビートルズは初期のころ5ピースバンドでした。そのころにジョン・レノンの親友であり、メンバーの一人として、ベースを担当していたのが彼です。元々画家を志していたスチュアートは、メジャーデビュー前に脱退。その後脳出血により、わずか21歳で夭折してしまいます。
そんな、スチュアート・サトクリフの生涯を、野心をたぎらせて成り上がっていく若き日のビートルズの姿と共に描いたのが、この『バック・ビート』です。スチュアートと女性写真家の恋、ジョンとの友情をメインにストーリーは展開していきます。
この映画、何といってもまず、メンバー4人がかなり本物に似ています。中でも傑出しているのが、ポール。長男のジェームズ・マッカートニー以外に男児の隠し子がいたのではないかと疑いたくなるほど、顔・表情・仕草、すべてがまんま、ポールです。そんな4人が「twist and shout」や「Please Mr.Postman」を熱唱するシーンは圧巻! しかも、これ、演者ではなく、ニルヴァーナやソニックユースなどのオルタナティブ・ロックバンドのメンバーが演奏・歌唱した音源をアテレコしているため、クオリティも半端ではありません。その一場面だけでも、観る価値はあるので、ぜひ、YOUTUBEなどでご覧になってください。

■『アクロス・ザ・ユニバース』-2007年公開

最後に紹介するのは、ミュージカル映画です。ビートルズの楽曲33曲で構成された本作は、全米で23館の限定公開だったものの、口コミを通じて人気が急上昇。最終的に964館まで拡大し、その年のアカデミー賞・衣装デザイン賞、ゴールデングローブ賞・作品賞 (ミュージカル・コメディ部門)、グラミー賞・最優秀サウンドトラック賞にノミネートされるなどし、当時、大きな話題を呼びました。
先ほど上げた『アイ・アム・サム』『バック・ビート』は、ビートルズをあまり知らない人でも十二分に楽しめます。けれども、この作品は、ビートルズの楽曲はもちろん、その成り立ち・歴史も知らないと「?」と感じる場面が多い映画です。まぁ、色彩豊かな映像美と役者たちがアテレコなしで挑戦する歌唱シーンもあり、楽しめることは楽しめるのですが、100%堪能するには、やはり、ビートルズ史を学んだ方がいいかも知れません。なので、これの前に「ザ・ビートルズ・アンソロジー」という、ビートルズの結成~解散までを追ったドキュメンタリー作品を鑑賞することをおススメします。
その後に観ると、次々と繰り広げられるオマージュに心躍ることでしょう。

いかがでしたでしょうか? ここに上げた映画のように、その価値を世の中に再提示するコンテンツが作られ続けているからこそ、ビートルズは、直撃世代以外からも愛されているのでしょう。それは映画に限らず、例えば、TVのCMや番組の主題歌でカヴァーされるのかもしれないし、以前、雑誌「モーニング」で連載していた「僕はビートルズ」のような漫画というカタチで現れるかもしれません。いずれにしても、今後も再生成されていくであろう“ビートルズ伝説”に注目していきたいところです。

●文 ロックスター小島

この記事で紹介している作品

アイ・アム・サム
バック・ビート
アクロス・ザ・ユニバース

記事制作 : dmenu映画