橋本環奈が“快感”する理由とは!? 「セーラー服と機関銃」続編の意外性

コラム

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『セーラー服と機関銃 -卒業-』
『セーラー服と機関銃 -卒業-』
©2016「セーラー服と機関銃 -卒業-」製作委員会

文=紀平照幸

赤川次郎原作の小説「セーラー服と機関銃」と言えば、81年に薬師丸ひろ子主演で映画化され、その後82年に原田知世、2006年に長澤まさみ主演でテレビドラマ化された作品ですが、このたび原作小説の続編「セーラー服と機関銃・その後-卒業-」も橋本環奈主演で映画化され、『セーラー服と機関銃 -卒業-』として3月5日に公開されます。なぜ、この題材は何度も繰り返し映像化されてきたのでしょう?

もともと原作は“タイトルありき”の作品だったといいます。会社員との兼業をやめ作家一本でやっていく決心をした赤川次郎がプロとしての最初の作品を執筆するにあたって、機関銃を持った少女のイメージを思い描き(映画ファンでもある赤川は、よくビジュアルイメージから小説を組み立てるそうです)、そこから女子高生がヤクザの組長に、というプロットに発展させていったのが原作小説。これを、ちょうど薬師丸ひろ子の映画『翔んだカップル』(80)で監督デビューしたばかりだった相米慎二監督が、彼女主演で企画を立て、映画化にこぎつけました。当初はあのヒット企画に敏感な角川春樹ですら、彼女の主演や主題歌を歌うことに反対していたほどの冒険的な企画でした(先に薬師丸に脚本を読ませ、彼女の方から春樹を説得させたらしい)。

そして81年に完成した映画は、アイドル映画にしては主役のアップが少なく、ロングショットや長回しを多用した意表を突く作品でしたが、結果的に大ヒットを記録。薬師丸ひろ子を国民的人気スターの座に押し上げることになりました。ちなみに有名なセリフ「カ・イ・カ・ン…」は原作にはない映画オリジナルのもの。

『セーラー服と機関銃 -卒業-』
『セーラー服と機関銃 -卒業-』
©2016「セーラー服と機関銃 -卒業-」製作委員会

こうした映画の成り立ちもかなり規格外ですが、そもそもこの作品の構造そのものがかなり規格外なものでした。何といっても“セーラー服”と“機関銃”という、本来組み合わされるはずのないものがタイトルなのですから(原作者の赤川自身、映画化の際に改題されるものだと思っていたそうです)。第一、日本映画では機関銃自体ほとんど出てきません(SFや戦争映画でもない限り、アクション映画でも拳銃がせいぜい)。

しかし、その非日常の世界を具現化したのが薬師丸ひろ子という存在だったのです。撮影中に爆破物の破片が飛んできて顔に怪我をしても演技を続けたという逸話からもうかがえるように、彼女自身も規格外な女優だったゆえに成立した世界だったのです。

薬師丸は単独主演2作目、原田と長澤はテレビドラマ初主演を飾った作品であり、彼女らがみな後にトップスターになったため、「セーラー服と機関銃」はスターへの登竜門と呼ばれることもありますが、35年間に4本と、決して多いとは言えない数です(しかも映画は今回が2本目)。それはこの作品世界を成り立たせるためには“規格外の女優”が必要とされたからではないでしょうか。生半可なアイドルでは“機関銃ごっこ”になってしまう危険性をもはらんでいる作品なのです。

『セーラー服と機関銃 -卒業-』
『セーラー服と機関銃 -卒業-』
©2016「セーラー服と機関銃 -卒業-」製作委員会

さて、最新作『セーラー服と機関銃 -卒業-』はどうなのでしょうか。過去の3作が同じ原作の映像化だったのに対し、今回は初の“続編”です。弱小ヤクザの目高組を解散し、普通の女子高生に戻った星泉(橋本環奈)の高校3年の夏を描くもの。そして、この映画もまた、いわゆる“アイドル主演の青春学園もの”とは違う構造を持っています。なんと“ヤクザ映画(いわゆる東映任侠路線)”のフォーマットで作られているのです。基本ラインは、昔気質のヤクザが新興の極悪組織に徹底的にいじめられ、ラストでついに怒りを爆発させる、というもの。都市開発の名目で街の乗っ取りを企む、安藤政信扮する悪役は政治家や殺し屋を手足のように扱って泉たちを追い詰めていきます。その悪逆非道ぶりが際立つほどに、クライマックスの泉や月永(長谷川博己)の殴り込みシーンの爽快感が増すわけですね。

この映画、流血や銃撃戦の量もハンパではなく(人もいっぱい死にます)、敵の強大な勢力は、どう考えても女子高生や弱小の組が太刀打ちできるはずもありません。そんな非現実的な問題を解決するために必要なのが、本来女子高生の手にするはずのない機関銃であり、“あのシーン”となるわけなのです。

今回の星泉役は橋本環奈。「1000年に一人の逸材」「天使すぎる!」と話題を呼んだ17歳の、主演デビュー作にあたります。しかもこの映画は「角川映画40周年」の記念作品。そんな数々のプレッシャーをはねのけ、堂々と正義感あふれる主人公を演じきった(もちろんエンディングで主題歌も歌います)彼女もまた、“規格外の女優”という系譜に連なる者なのかもしれません。

この記事で紹介している作品

『セーラー服と機関銃‐卒業‐』
『セーラー服と機関銃』

『セーラー服と機関銃 -卒業-』
3月5日(土)全国ロードショー
©2016「セーラー服と機関銃 -卒業-」製作委員会
配給:KADOKAWA

記事制作 : Avanti Press(外部サイト)