【映画の料理作ってみたらvol.11】ラピュタパンと卵を使った朝ごはんレシピ

コラム

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文=金田裕美子

ただの目玉焼きのせトーストなのに
なぜこんなに惹かれるんだろう

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ラピュタパン

今回挑戦するのは、映画に登場する料理のなかでも絶大な人気を誇るメニューです。実際に作ってみたという人も多そう。なぜなら、とっても簡単だから。そう、『天空の城ラピュタ』に出てくる目玉焼きパンです。これ、「ラピュタパン」とも呼ばれ、ウィキペディアの1項目になっているくらいポピュラーなもののようです。でもこの料理、「卵を焼きました、パンにのせました」で終わってしまうので、もう何種類か映画に出てくる卵料理を作りたいと思います。

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『天空の城ラピュタ』DVD発売中/4700円(税抜)
発売元:ウォルト・ディズニー・スタジオ・ジャパン
©1986 二馬力・G

『天空の城ラピュタ』は、スタジオジブリの第1回制作作品です。鉱山で働く少年パズーはある夜、空から光るものが落ちてくるのを目撃します。急いで駆けつけると、落ちてきたのはなんと気を失った少女。光っていたのは、彼女が首にかけている不思議な青い石でした。パズーはなんとか彼女を抱きとめて助け、家に連れ帰ります。翌朝、パズーが朝食に作っているのが目玉焼。でもまだ見習いで貧しいパズーの家には、卵がひとつしかないのでしょう。シータと名乗るその少女と分け合うために、目玉焼きを真ん中から半分にカットします。

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目玉焼きを作ります

とそこへ、シータの持つ石を狙う空中海賊たちが追ってきて、パズーとシータは食事もできないまま家から逃げ出します。炭鉱内に逃げ込んで一息ついたパズーが、カバンからやおら取り出すのが、青リンゴと、先ほどの半分に切った目玉焼き。仲良く半分ずつパンにのせて、ふたりは目玉焼きをぺろんと食べます。特別なごちそうではありませんが、これが何とも美味しそう。真似したくなる人が多いものうなずけます。しかし、追手から間一髪で逃れたあの状況で、パズーはいつカット済み目玉焼きとパンをカバンにしまったのか……などと無粋なことは考えてはいけません。腹が減っては映画の主役は務まらないのです。

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目玉焼きを半分に切りわけます

これにはレシピというほどのものはないですが、パズーが卵を半分に切った時に黄身が流れ出さないので、結構よく焼いているものと思われます。油をひいたフライパンに卵を割り入れてじーっくり焼き、フライ返しで半分に。それをパンにのせて、完成。

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ラピュタパンのできあがり!

目玉焼きは世界中で愛されているメニューゆえ、外国映画にも日本映画にもよく登場します。サスペンスの神様アルフレッド・ヒッチコック監督は鳥嫌いが高じて卵も嫌いだったそうで、『泥棒成金』では、裕福なマダムが目玉焼きに煙草を押しつけて火を消します。森田芳光監督の名を一躍知らしめた『家族ゲーム』では、一家のお父さん(伊丹十三)が毎朝、目玉焼きの半熟の黄身に直接口をつけてチューチュー吸っています。黄身に火が通りすぎて固かった日には「チューチューできないじゃないか」とお母さんに文句を言うほど、なぜかこの食べ方にこだわるお父さん……。ま、お皿が落ちにくい黄身で汚れないので洗いやすくていいですが。

忙しい朝にぴったりエッグ・イン・ザ・ホール

ニューヨークに住むイタリア系のカストリーニ家の人々と、一家の娘ロレッタ(シェール)の恋を描くロマンティック・コメディ『月の輝く夜に』で、お母さんのローズ(オリンピア・デュカキス)が作っているのは、ちょっと面白い目玉焼き。パンの真ん中をくり抜いて卵を落とす、エッグ・イン・ザ・バスケットとかエッグ・イン・ザ・ホールと呼ばれるものです。これはこの映画以前にも、1935年の『Mary Jane's Pa』や1941年の『Moon Over Miami』という映画に出てくるらしいので、かなり古くからある料理のようです。

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くり抜いたパンの真ん中に卵を落とします

これもわざわざレシピを説明するほどのこともなく、フライパンにバターをひき、真ん中をくり抜いたパンに卵を割り入れ、両面を焼けば出来上がり。お母さんはフライパンの端のほうでパプリカらしきものも焼いてパンにのせていました。パンに目玉焼きを挟むでもなく、合体させてしまうアイデアが素晴らしい。でもなぜ? うーん、パンと卵が同時に焼けるところが忙しい朝には良いのかもしれません。お味のほうは……見た通り、パンと目玉焼きでした。

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『月の輝く夜に』WOWOWシネマで3月30日(水) 11:00から、4月5日(火) 21:00から放送予定
©1987 METRO-GOLDWYN-MAYER STUDIOS INC.. All Rights Reserved

体力増強に効果!? 生卵一気飲み

料理といえるのかどうかわかりませんが、卵の出てくる映画といえば『ロッキー』。ヘビー級チャンピオン、アポロ・クリード(カール・ウェザース)と対戦することになった無名のボクサー、ロッキー(シルヴェスター・スタローン)は、トレーニングのために朝4時に起き出して冷蔵庫に直行、グラスに生卵を5個割り入れて一気に飲み干します。卵かけご飯やすきやきなどで普通に食べている日本人と違い、生卵を食する習慣のないアメリカ人には、このシーンは相当強烈だったようです。ちなみに先ごろ公開された『クリード チャンプを継ぐ男』では、ボクサー志望のアポロの息子アドニス(マイケル・B・ジョーダン)をロッキーがマンツーマンで指導します。さすがにアドニスに生卵を飲ませるようなことはしていませんでしたが。

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「『ロッキー』ブルーレイコレクション<6枚組>」発売中/7600円+税
20世紀 フォックス ホーム エンターテイメント
(C)2015 Metro-Goldwyn-Mayer Studios Inc. All Rights Reserved.
Distributed by Twentieth Century Fox Home Entertainment LLC.

反骨精神を象徴するのは固茹で卵一気食べ

もうひとつ強烈な卵映画(?)は、ポール・ニューマン主演の『暴力脱獄』。酔ってパーキングメーターを壊した罪で服役中のルーク(ニューマン)は、刑務所内で「1時間以内に茹で卵を50個食べる」という無謀な賭けに挑みます。これは固茹でか半熟かによって相当食べやすさが変わると思いますが、映画を見た感じではより食べにくい固茹でっぽい。ニューマンは実際にかなりの数の茹で卵を食べている模様です。反骨精神あふれるこの作品、邦題からは想像もつかない傑作です(原題はCool Hand Luke)。『ハスラー』『明日に向って撃て!』『スティング』など数々の名作に出演しているポール・ニューマンの作品の中でも、ベスト!と断言しておきましょう。

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『暴力脱獄』
©WARNER BROS / THE KOBAL COLLECTION

そういえばニューマンは、アルコール依存症の落ちぶれた弁護士を演じた『評決』で、ジョッキのビールに生卵を落として飲んでいました。お酒だけ飲むよりは栄養がある、ということなのでしょうか。まあ生卵ビールも茹で卵50個も、わざわざ作ってみなくていいでしょう。

憧れの朝食フレンチトーストもかつては…

『クレイマー、クレイマー』では、仕事一筋だったお父さんテッド(ダスティン・ホフマン)と息子ビリー(ジャスティン・ヘンリー)がフレンチトーストを作ります。

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『クレイマー、クレイマー』フレンチトーストを作るクレイマー家の親子
©COLUMBIA / THE KOBAL COLLECTION

家事と育児を任せきりだった妻ジョアンナ(メリル・ストリープ)に突然家を出て行かれてしまったテッドは、料理などしたことがないらしく、マグカップに卵と牛乳を溶いて無理やりパンを浸しドロドロ溢れさせます。そしてぐちゃぐちゃになったパンをフライパンに投入した挙句、鉄のフライパンの柄を素手で掴んで熱さのあまり床の上に落としてぶちまけ、妻と自分自身への怒りが爆発。フライパンを蹴飛ばします。でも、父と息子だけの生活にすっかり慣れた映画の終盤では、ちゃんとボウルに卵と牛乳を入れてビリーがかき回し、テッドがパンを浸してバターを入れたプライパンに投入する、という役割分担が確立されていました。ここに至って、テッドは鍋つかみというすばらしい利器の存在にも気づいたようです。

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フレンチトースト

マティーニと合わせて
クリームド・スピナッチのポーチドエッグのせ

先日発表されたアカデミー賞で、主演女優賞と助演女優賞にケイト・ブランシェットとルーニー・マーラがそれぞれノミネートされていた『キャロル』にも卵料理が登場します。

百貨店の売り子のアルバイトをしているテレーズ(マーラ)は、娘のクリスマスプレゼントを買いに来た毛皮のコートの婦人キャロル(ブランシェット)が忘れていった手袋を彼女の家に送ります。そのお礼に、とキャロルがテレーズをランチに誘ったレストランで注文するのが、クリームド・スピナッチのポーチドエッグのせ、そしてジンベースのカクテル、マティーニ。不慣れなテレーズは「私も同じものを」と注文します。仕事中でもお酒を飲んでしまうところが50年代っぽい。しかし、これはランチメニューなんでしょうか。マティーニのおつまみ? よくわかりませんが、ここへきてやっと「作ってみたら」にふさわしい、多少調理手順の必要な料理が登場。早速挑戦してみます。

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『キャロル』テレーズ(マーラ)とクリームド・スピナッチの
ポーチドエッグのせを食べるキャロル(ブランシェット)
©NUMBER 9 FILMS (CAROL) LIMITED /
CHANNEL FOUR TELEVISION CORPORATION 2014 ALL RIGHTS RESERVED

まずクリームド・スピナッチ。ほうれん草は塩を入れた熱湯で茹でて冷水にとり、軽く絞って3~4センチに切ります。鍋にバターを入れて玉ねぎのみじん切りを炒め、小麦粉を加えて粉っぽさがなくなるまで炒めます。ここに牛乳を少量加え、だまにならないようにヘラでなめらかになるまでかき回します。さらに牛乳を同じように数回に分けて加え、なめらかかつ好みのとろみになったらほうれん草を入れ、塩コショウで味を調えます。

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バターで炒めた玉ねぎのみじん切りに小麦粉と牛乳を加え、
とろみがついたらほうれん草を入れて塩コショウ

次はポーチドエッグ。卵はあらかじめ割って、ひとつずつ小さな器に入れておきます。鍋にお湯を沸かして塩少々と酢を加え、沸騰したら弱火にし、お湯をかき回して渦を作ります。酢を入れるのは凝固作用を高めて固まりやすくするため、渦を作るのは形をきれいに仕上げるためです。渦の中心に卵をそっと落とし、2、3分茹でてから引き上げ、キッチンペーパーなどで水気を拭き取ります。

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ポーチドエッグは塩少々と酢を加えて沸騰させ、
弱火にしたらお湯をかき回して渦を作り、卵を静かに割入れて作る

お皿に盛ったほうれん草の上にのせてできあがり。美味しいけれど、やはり朝ご飯なのかお酒のおつまみなのか、よくわかりませんでした。

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クリームド・スピナッチのポーチドエッグのせ

ホテルのコンシェルジュに材料をお願いして作るエッグベネディクト

同じくポーチドエッグを使った、いま日本でも流行の料理といえばエッグベネディクト。ベネディクトさんという人が考案したことからこの名前がついたそうですが、それがどこのベネディクトさんなのかは諸説あるようです。ソフィア・コッポラ監督の『SOMEWHERE』には、このエッグベネディクトを作るシーンがあります。

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『SOMEWHERE』DVD発売中
4700円(税抜)/発売元:株式会社東北新社
©2010 - Somewhere LLC

ハリウッドスターのジョニー(スティーヴン・ドーフ)が暮らすロサンゼルスの高級ホテルに、前妻との娘クレオ(ファニング)がやって来て、彼女がサマーキャンプに行くまでの間一緒に暮らすことになります。キッチンつきのホテルの部屋で朝、クレオがジョニーとその友人のために手作りするのがエッグベネディクト。私もクレオを真似てみます。

白と黄色とピンクのこの料理、いかにもコッポラ監督が好みそうなガーリーなビジュアル。まずその黄色の部分、オランデーズソースを作ります。卵黄2個をボウルに入れて泡立て器で溶き、レモン汁大さじ1、塩こしょうを加えてよく混ぜます。ボウルを湯せんにかけ、溶かしバター70gを少しずつ加えながらもったりするまでよく混ぜればソースの出来上がり。

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黄身2個に溶かしバターを加えながらよくかき混ぜオランデーズソースを作ります
イングリッシュマフィンの上にハムとポーチドエッグをのせオランデーズソースをとろーり

次にイングリッシュマフィンを真ん中から2枚に分けてトースターで焼き、フライパンで焼いたハムをのせます。ここに先ほどと同じ手順で作ったポーチドエッグをのせ、オランデーズソースをたっぷりかけます。クレオがやっていたように、あさつきをハサミで切って上に散らせば出来上がり。オランデーズソースは、オイルでなくバターで作った濃厚なマヨネーズのような味わいです。

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白と黄色とピンクのエッグベネディクト

『SOMEWHERE』では、お父さんのジョニーが「ソースが重すぎず、パーフェクトだ」とクレオの料理を絶賛していました。

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『SOMEWHERE』DVD発売中
4700円(税抜)/発売元:株式会社東北新社
©2010 - Somewhere LLC

新企画発表!? 「映画の料理を予想して先に作ってみたら」

卵料理をいろいろ探しているうちに、今アメリカ西海岸で大流行、というふれこみの卵料理を教えてもらいました。その名も「エッグスラット」。レシピを調べてみると、日本でも人気のメイソンジャーにハーブなどで味付けしたマッシュポテトと卵を入れて作るらしい。ジャー入りというそのビジュアルも面白いし、西海岸で流行っているということはハリウッド映画にもそのうち登場するであろう、という予想のもと、これも作ってみちゃいました。「映画の料理作ってみたら」を遥かに超越する、「映画の料理を予想して先に作ってみたら」です。

まずマッシュポテトを作ります。じゃがいもを茹でてポテトマッシャーでつぶし、バターと牛乳を加えて鍋でなめらかになるまでかき混ぜ、塩こしょうで味を調えます。牛乳多めでクリーミーにしたほうが私は好み。レシピには「ハーブなどで味つけしたマッシュポテト」というものすごくざっくりした説明しかなされていませんでしたが、なんだかあっさりしすぎな感じがするので、私はパルメザンチーズを加えてみました。これをジャーに入れて、その上に卵を割り入れて蓋をし、ジャーごと沸騰したお湯に入れて加熱します。卵に火が通ったらジャーの蓋を開け、塩コショウ、パルメザンチーズ、パセリを散らして出来上がり。

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バターと牛乳を加えてなめらかにしたマッシュポテトをジャーに入れ、
卵を割り入れて蓋をして沸騰したお湯で加熱

これで実感したのは、メイソンジャーというものは思った以上に容量が大きいということです。写真映りのいいようにジャーの上のほうまでマッシュポテトを入れましたが、これでじゃがいも大3個分くらい。この量に対して卵1個じゃ足りなそうですが、まあ見栄えのために1個にしておきました。それにしても、湯せんというのは中に入っているものに火が通るまでに結構時間がかかります。なぜわざわざジャーに入れて湯せんにするのでしょう。忙しい朝にはとっても不向きな感じ。しかも熱くなったジャーの扱いが結構大変で、私は「あぢーっ」っとひっくり返してしまいました。味は、まさしくマッシュポテトと卵。なぜこれがそんなに人気なのか、私にはいまひとつ理解できません。西海岸で大人気のエッグスラットは、いろいろと謎の多い料理であることがわかりました。「映画の料理を予想する」という史上初の私の試みは、あまり当てにならなそうです……。

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「エッグスラット」

さて、いろいろ作ってみた卵料理、ひとつひとつは簡単ですが、一緒に並べると結構豪華。ちょっとホテルの朝食みたいな、よそ行きの気分になるのが不思議です。お休みの日など、いろんな映画に思いをはせながら普段とは違う卵料理を作ってみるのも楽しそうです。

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いろいろな卵料理を並べてみました。ホテルの朝食気分?

【卵料理のレシピ】
〈ラピュタパン〉
 卵、食パン、塩、コショウ
〈エッグ・イン・ザ・バスケット〉
 卵、大きめのバゲット、バター、塩、コショウ、パプリカ
〈フレンチトースト〉
 卵、牛乳、食パン、バター、パウダーシュガー
〈クリームド・スピナッチ&ポーチドエッグ〉
 ほうれん草、玉ねぎ、バター、小麦粉、牛乳、塩、コショウ、卵、酢
〈エッグベネディクト〉
 卵、酢、卵黄、レモン汁、バター、塩、コショウ、イングリッシュマフィン、ハム、あさつき
〈エッグスラット〉
 じゃがいも、牛乳、バター、塩、コショウ、パルメザンチーズ、卵、パセリ

この記事で紹介している作品

 天空の城ラピュタ
 月の輝く夜に
暴力脱獄
 クレイマー、クレイマー
 キャロル
 SOMEWHERE
 泥棒成金
 家族ゲーム

記事制作 : Avanti Press(外部サイト)

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