「ウォレスとグルミット」「ひつじのショーン」の生みの親であるニック・パーク監督が電話インタビューに応じ、新作映画『アーリーマン ~ダグと仲間のキックオフ!~』やクレイアニメーションの魅力を語った。

 先史時代を舞台にした『アーリーマン』の主人公は原始人のダグ(住んでいるのは現在の英国マンチェスター辺り)。彼らより進歩している“青銅器人”に奪われた故郷を取り戻すため、強豪サッカーチームを擁する青銅器人に対し、ルールもわからない状態からサッカーで戦いを挑む姿をコミカルに描いている。

 「原始人×サッカー」というまさかのコラボについて、パーク監督は「クレイアニメというある意味原始的な手法が、原始人にぴったりだとずっと思っていて。クレイではマヌケな顔が作れるし、一つ一つに指紋が残っているような雰囲気が好きなんだ」ともともと原始人という設定を気に入っていたと明かす。そしてこん棒を持った原始人が岩を打つ姿を描いていたときに、それがスポーツをしているように見え、「原始人×スポーツ」というアイデアを思い付いたという。「先史時代の負け犬たちのスポーツ映画というのは、まだ誰も観たことがないと思ったんだ(笑)。それがサッカーに発展したんだよ」。

 しかし、本作は決してサッカーファンに向けた映画というわけではないといい、パーク監督は「映画スタジオが、本作が“男性向けの映画”とみなされるんじゃないかと不安を感じていたのは知っている。でもそれは全く違う。僕は全然サッカーファンじゃないしね(笑)。何よりも、コメディーを作りたかった。サッカーは寓喩みたいなものなんだ」と念を押す。実際に子供にも大人にも響く、笑えるエンターテインメント作になっており、パーク監督は「今も僕の中には“子供の僕”が存在しているし、子供たちの中には大人な部分があると思う。僕は子供の頃に観たら気に入ったはずと思うものを作っていて、今は大人だから大人も楽しめるものにしているんだ」と笑った。

 今や実写と見まがうほどのCGアニメーションも多数作られている中で、パーク監督は手作り感あふれるクレイアニメーションにこだわってきた。クレイの強みについては「ストーリーやキャラクターが良ければ手法は何だって構わないと言う人たちもいるけれど、僕は手法も同じように重要だと思う。粗削りで、作った人の指紋が残っているようなクレイアニメーションだから生まれるユーモアや魅力があると思うんだ。僕にとっては、それらを含めて作品のクオリティーだ」と優しく穏やかな口調ながら力説。

 さらに「そこからはユーモアだけでなく、感情も生まれる。例えば、僕が(「ウォレスとグルミット」の忠犬)グルミットを生み出せたのは、彼の眉を直接手で触れ、微妙に動かしてみることができたからなんだ。そうすることで僕は、彼には口が要らないと気付いた。彼は話す必要がない。なぜなら全ては彼の目から伝わるから。もしこれがクレイでなければ、僕はこのことに気付けなかっただろう」とキャラクターとその手法は密接に結びついていると続けた。『アーリーマン』の主人公ダグもシンプルな造形でありながらびっくりするほど目で多くを物語っており、クレイアニメーションの奥深さを感じさせられる。(編集部・市川遥)

映画『アーリーマン ~ダグと仲間のキックオフ!~』は公開中