雑誌「nicola(ニコラ)」専属モデルとして活躍する一方、昨年、映画『幼な子われらに生まれ』で女優デビューし、その繊細な演技力で注目された南沙良。初主演を務める映画『志乃ちゃんは自分の名前が言えない』の公開を前に、女優、モデルとして活躍する16歳の「今」を明かした。

 「nicola(ニコラ)」出身、誕生日が6月11日。同じ事務所に所属する新垣結衣との共通項を持つ南。「雑誌で新垣さんを初めて拝見して、こんなにかわいい人がいるんだと感動したのがこの世界に入ったきっかけだったので、今もずっと憧れの存在」と目を輝かせる南は、新作映画で吃音のある難役に挑戦している。

 「ぼくは麻理のなか」「血の轍」などの漫画家・押見修造の同名作に基づく本作は、吃音のためうまく言葉を話せず周囲になじめない高校一年生の志乃(南)と、音楽が生きがいなのに音痴な加代(蒔田彩珠)が不器用にも交流していく姿を、思春期の少年少女が抱く危うくまぶしい一瞬とともに映し出す青春ドラマ。乃木坂46のMVなどを手掛け、本作が長編商業映画デビュー作となる湯浅弘章監督のもと、同じ2002年生まれの蒔田とのフレッシュなダブル主演が実現した。

 言葉をうまく発せない志乃というキャラクターについて「最初は吃音を、とても重いものに感じていたのですが、実際に吃音のある方にお話をうかがって、重く考えすぎないことも大切だと気づいて。湯浅監督も『感じたことをそのまま表現すればいい、感情を吐き出すのは恥ずかしいことじゃない』とおっしゃって、とても励みになりました」と振り返る南。「わたしも何かあるとすぐに逃げ出したくなったり、自分を素直に出せないところが志乃と同じだと思っていたので、素直にお芝居ができました」と共感するところも多かったという。

 劇中で、志乃は加代のアイデアによりバンドを結成。南は力強い歌声を初披露している。「一番楽しかったのは、加代との路上ライブのシーン。あんなに大勢の人の前で歌うのは初めてでした」と明るい表情で語り出すも、「ラストシーンは大変でした。監督も、最後に全部がつながるようにとおっしゃって、わたしも最後にすべてを持っていくように心がけました」と本作の最大の山場について思いを巡らせる。その南の迫真の演技には度肝を抜かれるに違いない。

 デビュー作の『幼な子われらに生まれ』では劇中、継父を演じた浅野忠信ら共演者が絶賛する演技力の高さで注目を浴びた南だが、それは天性の才能なのか? しかし当人は頭で考えるよりも現場でスイッチが入るタイプのようで、「不器用なので考えて準備するより、思ったままにやってしまう方」「過去のことより、どうしても今、今となってしまう性格で、(撮影でも)今いただいたお仕事を精一杯の力で一つ一つこなしたい」と仕事への取り組み方を話す。

 その一方で、「モデルと女優では表現の仕方が違うと思っていて、モデルの時には役を忘れて切り替えようと気をつけています。志乃を思い出してしまうこともあって……」と言い、役に没頭するあまり現場を離れても役を引きずってしまうこともあるようだ。

 今後について「明るくて、かわいらしい女の子の役もやってみたい。キラキラしてみたいですね」と笑顔を見せる南は、現在5本の新作映画が待機中。快進撃は止まらない。(取材・文/岸田智)

映画『志乃ちゃんは自分の名前が言えない』は、7月14日より新宿武蔵野館ほか全国順次公開